子どものカンニングや不正を減らすには?魔法のバリアが有効だった!:モラルバリア効果の研究論文

【3歳~18歳】こども
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今回は魔法のバリア、想像上バリアが子どものカンニングや不正を減らすという研究を紹介します。

子どもにズルしないように課題を取り組んでもらうにはどうしたら良いのか?ヒントになるような論文でした。

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子どものカンニングを減らす研究:モラルバリア仮説

2020年の中国杭州師範大学の研究です。

対象

5歳から6歳の子供350名を対象としました。
そのうち50名を7つの条件にそれぞれに割り当て実験をしました。

実験内容

子どもたちにあるテストを受けてもらいました。
制限時間は5分です。
テストは5問出題され、最初の4問は簡単な問題でしたが、最後の問題はとても難しく制限時間内に解答することは難しい問題でした。

子供たちが試験を受ける部屋には、同じテーブルが2つ置かれていました。

子供たちはそのうちの1つのテーブルに座り、2つ目のテーブルにはテストの解答がおいてありました。
2つのテーブルは60㎝ほど離れて配置されており、席を離れることなく、素早く確実に解答を覗くことができる距離にしてありました。
部屋には隠しカメラが設置されており、子供たちのテストの進捗状況や覗き見を記録するために使用されました。

試験開始直前に研究者は用事があると言い、研究者がいない間にタイマーで5分セットし一人で問題を解くことや隣の机の解答用紙を見ないようにと告げて部屋から出ていきました。

これを以下の7つの条件で行いました

✔机と机の間に何も行い場合
✔机と机の間にガラス入り仕切りを置く場合
✔机と机の間にガラスの無いフレームのみを置く場合
✔他にも反対側にパーティションを置くなど色んなバリエーションの置き方を3つしました。

そして
✔何も置かず、魔法のバリアを作った場合
研究者は部屋を出る前に「見て、私は魔法の杖を持っています。今、私は魔法をかけます。私はここに(子どものいる机と解答の置いてある机の間)バリアを作りました。これは目に見えず、誰にも見えません。それはあなたのテーブルと隣のテーブルの間に立っています。見えなくても必ずここにあることを覚えておいてくださいね」と言いながらおもちゃの杖でラインを引く真似をして部屋から出ていきました。

以上のパターンで5分間のテストの様子を監視カメラと解答用紙の内容から解析しました。

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魔法のバリアもフレームがある場合と同じくらいのカンニングを防ぐ効果があった!

結果は
全ての条件で年齢が高いほどカンニングをする傾向がありました。

結果✔机と机の間にガラス入りの仕切りを置いた場合やフレームのみを置いた場合ではカンニングが有意に減りました。
✔何もない場合カンニングは54%していました。
✔フレームのみは28%
✔ガラス入り仕切りは16%でした。

そして魔法のバリアの場合の結果は

魔法のバリア効果✔魔法のバリアを作った場合もカンニングが有意に減りました。
✔カンニングの割合は26%でした。

✔何もしていない場合の半分近くの割合減る効果がありました。

この魔法のバリア効果のことをモラルバリア仮説ともいうそうです。
ただ線があると言うだけで、何も置いていないのにこれだけの違いがあるのに驚きました!

モラルバリア効果とは?

モラルバリア効果とは、空間的な境界線を導入することでモラル違反が抑制されるということのようです。
この行動の原因として、幼少期から目印などの環境的な合図を使って、どのエリアを探索してもよいか、どのエリアを探索してはいけないかを知るように社会化されていることが考えられると研究者は述べています。
子どもたちは、慎重な理由(例えば、遊び場で遊んでもいいけど、道で遊んではいけない)だけでなく、社会的な理由(例えば、サッカー場で遊んでもいいけど、柵で囲われた芝生の上ではいけない)などで境界を意識します。
このように子どもの能力は、明示的な教育(例えば、横断歩道や「侵入禁止」の標識にどう対応するか)や暗黙の学習(例えば、見知らぬ人にどれくらい近くに立つべきかなど)の結果である可能性がある。
子どもたちは、環境の合図について以前に学んだことを現在の状況に一般化し、戦略的に配置された障壁を、許容される空間(自分たちが座っている場所)と許容されない空間(解答が置かれている場所)との間の仕切りとして見ていたと考えられ、これがモラルバリアです。

今回の研究でこのモラルバリアが明らかになったというわけですね。
空間認知と道徳的行動を結びつけ、子どもの環境の一見目立たない特徴であっても、子どもが正直に行動するように促すことができることを示していたと研究者は結論しています。

面白いですね。

そしてこの研究はナッジという大きなテーマのもとでも行われた実験のようです。

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ナッジとは?

ナッジとは行動経済学、政治理論、そして行動科学の一つの概念の一つ(Wikipedia)で、簡単にいうと環境の一見目立たない特徴が行動に影響を与え、それを利用することです。
今回は魔法のバリアという安価で簡単な方法が子どものカンニングを減らした。これがナッジによる現象のようです。
ナッジについてはまた詳しく説明するかもしれません。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?子どものカンニングを防ぐ意外と簡単な方法がわかりました。
この現象は色んな事に応用できそうですし、大人へも適用できそうというかしていることが分かりますよね。駅の改札やレジでは一列に並ぶとかです。

モラルバリアは生活していく上で重要な役割を担っているかもしれませんね。
また、魔法のバリアは子育てにもいろいろ応用できるかもしれませんね。

また子どもの不正を減らすのに良いうわさを伝えるというという心理学テクニックもあります。こちらに詳しく書いているのでこちらも参考にしてくださいね。↓

引用論文

Zhao, L., Zheng, Y., Compton, B. J., Qin, W., Zheng, J., Fu, G., … & Heyman, G. D. (2020). The moral barrier effect: Real and imagined barriers can reduce cheating. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(32), 19101-19107.

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