親の干渉や批判は子どもの学力を低下させ問題行動を増やす可能性:親の価値観は子どもに影響する

【3歳~18歳】こども
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東大生の親は「子どもに勉強しなさい!」など言わないとよく聞きます。これって意外と科学的に正しい可能性があるようです。

子どもにはついつい期待しますよね。勉強を沢山してもらって将来はお金持ちになり、社長や弁護士など社会的地位の高い立場を目指してほしいなど様々な期待があります。もちろん子どもに期待することは当然だと思います。

しかし、期待を態度に出して、子どもに過度の負担を与えるのは、子どもにとって好ましくないようです。

今回は親の価値観と学力について調べた研究を紹介します。

社会的成功の価値観が高い親の子どもは学力が低く、問題行動が多いという結果でした。

その理由や傾向について詳しく解説していきます。

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親の価値観と子どもの認識と学力を調べた研究

2017年Journal of Youth and Adolescence誌から報告されたアメリカオクラホマ州立大学の研究です。

裕福な家庭の中学生の学力や態度とその親の価値観を調べた。

3つの中学校の6年生(平均12歳)506名(50%が女性)が対象となりました。
重要なことは、子ども達の家庭の平均世帯年収は1348万円(12万4千ドル)で物価が高いアメリカでも比較的裕福な中~高所得の家庭を対象としています。

学生たちにアンケートを実施しました。

✔自分たちの親は以下の6つの価値観のどれを重視しているかを3つをランキングして書いてもらいました。

向社会的行動の価値観の質問
✔他人を尊重すること
✔困っている人を助けようとすること
✔他人に親切であること

社会的成功の価値観の質問
✔良い大学に通うこと
✔学業面で優秀であること
✔将来、成功したキャリアを持つこと

6つの質問のうち3つは学業的成功や社会での成功に関連する社会的地位を高める項目=社会的成功を重視する価値観でした。
残りの3つは親切や他人に親切であるなどの向社会的行動を重視する価値観でした。

向社会的行動(prosocial behavior)は,「他の個人や集団を助けようとしたり,こうした人々のためになることをしようとしてなされた自主的な行為」とされています。
参考文献
Eisenberg, N (1982). The development of prosocial behavior. New York: Academic Press.
Eisenberg, N., & Mussen, P. (1989). The roots of prosocial behavior in children.Cambridge: Cambridge University Press.

このランキングの特徴として、選べる項目は3つの社会的成功の価値観と3つの向社会的行動の価値観のみです。

そして社会的成功の価値観については、1位は3点、2位は2点、3位は1点と点数化しました。最高6点、最低0点です。

点数が高くなるほど社会的成功の価値観が高いと判断出来て、相対的に向社会的行動の価値観が低いことになります。(最高6点)

点数が低いほど向社会的行動の価値観が高いと判断出来て、相対的に社会的成功の価値観は低いことになります。(最低0点)

親からよく批判されるか?の度合いも評価しました。
評価方法は「親に成績が悪かったら叱られます」などの項目のアンケートを取り、得点が高いほど親からよく批判されている認識が高いとされます。

その他に内在化問題と外在化問題・自尊心を調べました。

内在化問題行動とは・・・・「泣き言を言う」、「よくすねる」、「気持ちが傷つきやすい」など恐怖、身体的な訴え、不安、社会的引きこもりなど自己の内部に起こる問題です。

外在化問題行動とは・・・・「じっとしていられない、落ち着かない、多動的」、「イライラしやすい」、「短気や熱っぽい」など他者や環境との葛藤として起こる問題です。

先生の評価も追加しました。教師の視点で子どもの問題行動と学習障害があるかを評価しました。

✔学校の成績(GPA)も評価しました。

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親が社会的成功の価値観が高い=成果主義だと成績が悪く問題行動が多かった!

全体的に親の価値観は六つのグループに分けることが出来ました。

社会的成功が高い(向社会的行動が低い)=5-6点
向社会的行動が高い(社会的成功が低い)=0-1点
中立=3点です(2つの価値観は同じくらい)

✔両親が中立的な価値観

✔両親の社会的成功の価値観が低い(向社会的行動の価値観が高い)

✔母親は向社会的行動が高い/父親は中立

✔父親は社会的成功が高く/母親は中立

✔母親は社会的成功が高く/父親は中立

✔両親は社会的成功が高く、向社会的行動は低い

また、母親よりも父親の方が達成感を重視していると感じている傾向が見られました。母親の価値観の方が子どもへの影響が大きい傾向にありました。

両親が中立的また向社会的行動の価値観が高い子どもは学力が良く、問題行動も少ない結果だった!


両親が中立的な価値観または両親が向社会的行動の価値観が高い場合は、
親からの批判が少なく感じており、自尊心が高く、成績が良い(GPAスコアが高い)、外在化や内在化の問題が少なく、先生の評価でも問題行動や学習上の問題が少ないなど、全体的に良好な結果でした。(図1と図2参照)

特に両親が中立的価値観だと内在化の問題が少ない結果でした。

向社会的行動が高い母親と中立の父親では子どもたちの得点は、「両親が中立」、「両親が向社会的行動の価値観が高い」とおおむね一致していましたが、得点は後者2クラスよりもわずかに結果が悪く、自尊心では有意に低いことが分かりました。

図1

 

図2

両親または親のどちらかの社会的成功の価値観が高いグループは結果が悪かった。

3つの「社会的成功の価値観が高いグループ」は子どもは、他のグループと比較して、すべての結果において悪いことが分かりました。

「社会的成功の価値観が高い」グループの子どもたちは、親からの批判の度合いが高く、内在化問題と外在化問題の度合いが高く、自尊心が低いことが報告されました。(図1参照)

また、学校の成績(GPA)が低く、教師から報告された問題行動や学習上の問題の度合いも高い結果でした。

特に親の批判が多い子どもは、外在化問題の上昇と学校の成績(GPA)の低下に有意に関連することがわかりました。(図2参照)

原因は親の成果主義の価値観が子どもにプレッシャーを与えているから

このような結果になった原因として、親は自分の価値観を子どもに反映させている可能性が高いと言われています。(意識的にも無意識的にも)社会的成功の価値観が子どもへの圧力やストレスとなり、いろいろな問題が起きると考えられています。

研究者は子どもが【自分の親は社会的成功の価値観を重視しない】と感じることが大切です。

また、今回の研究結果から、親がプレッシャーを和らげても、子どもの実際の学業成績は低下しないだろうと述べています。
自分の価値観を少し向社会的行動の価値観に変えてみると良いかもしれませんね。(難しいかもしれませんが)

さらに、次の可能性も指摘されています。

成果主義の価値観が高いため、子どもへの批判が多くなり、悪い結果となる可能性がある

今回の研究では、社会的成功の価値観が高いグループの子どもは親の批判をより強く感じていることが明らかになりました。

さらに母親が達成感を重視していると感じている子どもの中で、親からの批判を高いレベルで受けている場合に、内在化問題や学習上の問題リスクが高くなりました。

一方、母親が達成感を重視していると感じている子どもの中で、親からの批判が少ないと自尊心は高い傾向であることが分かりました。

これらの結果から言えることは、社会的成功の価値観を持つこと自体は決して悪いことではないかもしれません。(偏りすぎはやはり悪そうですが)中立の価値観が一番良い結果であるので、ある程度は社会的成功の価値観を持つことは良いのでしょう。

しかし、社会的成功の価値観が高いために、子どもを操作しようとする行為、親が子どもへ批判することが悪い結果につながっている可能性があるようです。
(例えば「勉強しなさい!」「テストの成績が悪い!」などを子どもに言ってしまうこと)
ここら辺の因果関係は明らかではありませんが可能性としてはとても高いと考えます。

東大生の子どもが勉強しなさいと言われたことがないというのも納得できる話ですね。

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まとめ

✔米国でも比較的裕福な家庭での研究結果である

✔向社会的行動が高い両親や中立の価値観を持つ子供は問題とされる行動は少なくや学力は高い傾向にあった!

✔社会的成功の価値観が高い親だとその逆の傾向だった!その原因は親の圧力や子どもを批判するからかもしれない

いかがでしたでしょうか?この研究結果を見ると東大生が良く言う「勉強しなさい」と言われたことが無いというお話も科学的に正しい可能性が高いようです。

社会的成功や成果主義よりも向社会的行動を大切にすることが学力を伸ばし、問題行動を減らすようです。

一見放任主義に見えますが、子ども自身が自分の力を伸ばすために必要なのでしょう。

きっと東大生の親たちは、決して無関心で何もしないわけでは無く、上手く子どもの学習の環境や機会を作り、あとは子ども次第というスタンスを取っているのだと考えます。つまり子どものサポートに徹するわけです。

そして、研究は子どもから取ったアンケートなのも重要です。

子どもが親の価値観をどう思っているか?が大切で、親自身はどう思っていようがあまり関係ないのかもしれません。

特に大事なことは子どもを操作したり批判したりしないということでしょう。
学習の機会を沢山持たせてあげることはとても大事ですが、それを無理矢理させることや上手くいくように操作や口を出すことは子どもの能力を悪くさせる原因になると考えます。

また、向社会的行動の価値観を大事にすること重要なようです。具体的には相手を思いやることですね。この価値観に重きを置くだけでも良い結果が得られるかもしれません。

この研究では親の批判的な行動が良くないのか、向社会的行動の価値観が高いことが良い結果を産むのかまでは分かっていません。これからのさらに詳しい研究に期待したいですね。

親はサポートに徹する

科学的に有効で子育てに大事な考えかもしれません。

他にも子どもの学力の記事を書いています。良かった読んでくださいね

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引用論文

Ciciolla, L., Curlee, A. S., Karageorge, J., & Luthar, S. S. (2017). When mothers and fathers are seen as disproportionately valuing achievements: Implications for adjustment among upper middle class youth. Journal of youth and adolescence, 46(5), 1057-1075.

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