今回は5歳の子どもは他人のために自分を犠牲に出来るか?という研究です
子どもは何歳から社会性や協調性を身に着けるのでしょうか?
結論は5歳にはもう身に着けている可能性が高いそうです。
自分と相手が協力した場合最も利益が得られる状況が、5歳児の自制心を最も発揮させることを発見した研究です。
大人が思うより子どもの成長は早いのかもしれませんね。親としては寂しい気もしますけど。
子どもの自制心を3つのパターンで比較!お互い協力した場合が一番自制心を発揮した研究
2020年にPSYCHOLOGICAL SCIENCE誌から報告されたドイツのマックスプランク進化人類学研究所の研究です。
ドイツとケニアの5歳児と6歳児を対象に修正版マシュマロ実験をした!
ドイツの5歳の子ども56人(女の子31人)と6歳の子ども48人(女の子22人)
ケニアのキクユ族の5歳の子ども50人(女児23人)と6歳の子ども53人(女児24人)が対象としました。
ドイツとケニアの異なる国が選ばれたのは文化的背景が違う子どもたちに共通することなのかを確かめるために選ばれました。
まず、実験の前に子ども達は2人1組のペアとなり、風船投げで二人で3分間一緒に遊ばせて、パートナーという自覚をもってもらいました。
そして、それぞれ子どもたちを別の部屋へ案内し一人にしました。その部屋には机の上にお菓子(クッキーなどその国の子どもに馴染みのあるお菓子)がおいてありました。
子ども達を3つの実験グループに分けた
有名なマシュマロ実験を改変したパターンをされました。
✔自分が我慢出来たらお菓子を追加でもらえるパターン(通常のマシュマロ実験)
「私はあと1分で出発しなければなりません。今すぐクッキーを食べてもいいし、私が戻ってくるまで待っていてもいい。私が戻ってきたときに、あなたのクッキーが残っていれば、2つ目のクッキーをあげます。私が戻る前にクッキーを食べてしまったら、2枚目のクッキーはもらえません」と自分の行動で自分だけに影響がでる=単独条件の状況でした。
✔自分とペアの子どもがお菓子を我慢出来たら二人とも追加でお菓子をもらえるパターン(相互依存関係)
実験者は子ども一人一人に「私はあと1分で出発しなければなりません。二人とも今すぐクッキーを食べてもいいし、私が戻ってくるまで待ってもいい。私が戻ってきたときに、二人のクッキーが残っていれば、二人とも二枚目のクッキーをあげます。私が戻る前にどちらかがクッキーを食べてしまったら、二人とも2枚目のクッキーはもらえません、あなた次第です」と自分と相手が協力すれば利益を得ることが出来る=相互依存関係の状況を作り出しました。
✔自分が我慢出来たら二人ともお菓子を追加でもらえるパターン(依存関係)
「私はあと1分で出発しなければなりません。あなたは今すぐクッキーを食べてもいいし、私が戻ってくるまで待ってもいい。私が戻ってきたときに、あなたのクッキーがまだ残っていたら、あなたとペアの子どもの二人とも二枚目のクッキーをあげます。私が戻ってくる前にクッキーを食べてしまったら、二人とも二枚目のクッキーはもらえません。」と自分が相手の結果を操作できる状況=依存関係の状況を作りました。
子どもたちはそれぞれの部屋に10分間一人にされました。10分後にお菓子を我慢できたか、出来なかったかの最終的な判定をしました。
実験の様子は、ダンボール箱の中に隠した隠しカメラでビデオ撮影されました。
子どもたちは、実験室に一人でいる間は、自分の行動が監視されていることに気づかないようにしました。
結果は、、、
スポンサードリンクお互いが協力すれば利益を得られるパターンの子どもが一番我慢できた!
✔相互依存関係の条件では,単独の条件よりも有意に多くの子どもがお菓子を食べるのを我慢出来ました。
✔6歳児は5歳児よりもわずかに我慢できる傾向がありました
✔依存条件では単独の条件よりは我慢できる傾向にありましたが、明らかな有意差はありませんでした。
自分と相手の協力が必要(相互依存関係)だった子どもは初めに決めたことは最後までやり遂げることも明らかになった。
さらに詳しい解析では
最初の1分以内にクッキーを食べた子どもと1分以上待った後にクッキーを食べた子どもを分けてみました。
この結果では、1分以内のすぐに食べた子どもの割合は、どの条件でもほとんど変わらないことがわかりました。
しかし、単独条件の子どもは,相互依存関係の子どもに比べて,1分以上待ってから食事をする割合が大幅に高くなりました。つまり、ずっと待っている割合は低くなりました。
つまり、相互依存関係の子どもは最初に食べないでおこうと決めると、やり遂げる可能性が高く単独の条件の子どもよりも粘り強いことも明らかになったのです。
スポンサードリンク5歳から連携や思いやり協調性は芽生える
今回の研究では少なくとも5歳までには協調性や連帯感が芽生えていることが明らかになりました。
5歳から6歳の子どもたちが、同じ課題を単独で行った場合よりも、結果が相互に関連している場合の方がリスクは増大するにもかかわらず、我慢する傾向(自制心が高かった)にあったのは、人間の協力関係、特に社会的な相互依存関係が5歳までの幼少期に形成するという先行研究の理論を支持することになったと研究者は述べています。
そして幼い子どもであっても、協力関係の中で社会的パートナーに対する義務感も生じると述べています。
5歳の子どもで社会に溶け込むためにいろいろなことを考えて行動しているということですね。
ちなみにケニアの子どもはドイツ人の子どもに比べて、自制心が高い傾向にあったようです。少しは文化的背景も関係あるかもしれないですね。
スポンサードリンクまとめ
✔自分とパートナーが協力すれば利益を得ることが出来る時、子どもは自制心を一番発揮した。また、一度我慢すると決めたら最後まで我慢する傾向にあった!
✔5歳からこの効果は認めた
✔自分が我慢すれば相手も利益を得る場合では有意差はなかったが、単独の場合より自制心が働く傾向にあった
いかがでしたでしょうか?子どもは5歳頃から協調性や社会性を獲得しているようですね。まだまだ子どものように見えて5歳でとても大人になっていくことが分かりました。面白いですね!
他にも子どもについての科学的根拠を書いています。良かったら読んでくださいね。
引用論文
Koomen, R., Grueneisen, S., & Herrmann, E. (2020). Children delay gratification for cooperative ends. Psychological science, 31(2), 139-148.