今回は童話について面白い論文があったので紹介します。
普段絵本はどのようなものを読んでいるでしょうか?
基本的には何でも良いと思います。
もしも絵本や本、物語で子どものモラルや道徳心が向上するとしたら?
そのような絵本を購入したくなりますよね
今回の研究ではどのような本の内容が子どもの道徳心である援助の意思や寄付的行動を促すのか?を検証した研究になります。
道徳的行動とポジティブまたはネガティブな感情を主人公Vs他人で比較した物語の研究
2020年のJournal of Experimental Child Psychology誌に出版された研究です。
対象
4~6歳の未就学児 322 名を対象にしました。
4種類の「まいごのペンギン」と「うさぎとカメ」を聞かせて実験した
子ども達はそれぞれ5個の物語を電子機器で聞かせて調査しました。
4種類は道徳的な話とされるお話です。「まいごのぺんぎん:Lost and Found」の話が選ばれました。こちらになります↓
※内容
簡単に内容をいうとある日少年が迷子のペンギンと出会い、誰の助けも得られないため、自分で南極まで送り届けるという内容です。
このお話でペンギンを助ける場合と助けない場合に話をアレンジしました。
もう一つは対象群として道徳的ではないお話である「うさぎと亀」のお話が選ばれました。みなさんも知っているお話ですよね、
子ども達はそれぞれ5つのグループに割り当てられ、同じくらいの長さで分量である以下の内容の物語を機械で聞きました。
✔道徳的ではないお話を読んだグループ(うさぎとかめの話)
まいごのぺんぎんのグループでは、
✔主人公がペンギンを助け、親が主人公に前向きな感情を伝えるグループ
✔主人公はペンギンを助けず、主人公が否定的な感情を言うグループ
✔主人公はペンギンを助けず、親が主人公に否定的な感情を伝えるグループ
もう少しそれぞれのグループの物語の内容を詳しくお伝えします、
✔主人公が前向きな感情を言うグループでは、
「男の子が迷子になったペンギンを見つけた。少年は、迷子になってしまったペンギンを拾い、苦労しながらもペンギンを助けて南極点に帰ろうとします。南極点に到着したとき、少年は幸せな気持ちになりました。」という内容が流れました。
✔主人公の親が主人公に前向きな感情を伝えるグループでは
ペンギンの父親が少年にとても感謝し、ペンギンを助けてくれたことを褒めていました。
という内容でした。
✔主人公の否定的な感情を言うグループ
少年はペンギンを助けませんでした。その後、少年は自分の助けない行動を思い出し、後悔と悲しみを感じた。
✔主人公の親が主人公に否定的な感情を伝えるグループ
少年はペンギンを助けませんでした。少年の父親がその事に非常に怒り、少年を叱りました。
道徳的な話を聞かせた場合、すべての話で道徳心が芽生えた!
お話を見せた後に援助する意思について調査しました。
「貧しい子どもたちに贈り物をしたいと思いますか?どんな贈り物をしたいですか?なぜですか?」
という質問をしました。
✔贈る意思がないと回答した場合は0点でした。(例:「プレゼントを贈りたくない」)
✔寄付する意思はあるが、貧しい子どもたちのニーズを考慮していない回答は1点でした(例:「鉛筆をたくさん持っているので、鉛筆をあげたい」)。
✔寄付の意思表示だけでなく、貧しい子どもたちのニーズに配慮した回答は2点でした(例:「鉛筆を持っていないので、鉛筆をあげたい」)
点数が高いグループが援助する意思が高いとされました。
結果は
✔特に主人公がペンギンを助け、前向きな感情を言うグループが一番効果を認めました。
これは助ける行動に対しては肯定的な感情を示し、助けない行動に対しては否定的な感情を示していた。そのため、すべての道徳的物語は、幼児に正しい道徳的判断を与え、その後の援助行動を促したと考えらえると研究者は述べています。
やはり王道なストーリーが一番子どもの道徳心を育むようですね!
しかし、この研究では意外なことも分かりました。
実際に行動に移したのは主人公が否定的な感情をした時だった!
寄付する意思の確認調査
さらに、この研究ではお話を聞いた後に、子どもに沢山あるシールの中から6つの好きなシールをあげました。
次に知らなない子どもの写真を見せ、とても貧しい環境にいる子どもであると説明しました。
そして、貧しい子にもシールを寄付できることを伝えました。
研究者は、シールは子どものものであり、寄付するかどうかは子どもが選択できることを強調した。
研究者は部屋から出て、子どもがシールを寄付するかは任せました。
子どもが寄付したシールの枚数を記録し、0枚から6枚までの範囲で記録しました。
結果は
✔主人公は助けず、否定的な感情を言うグループが一番寄付をしたのです。
✔道徳的でない話を聞いた子や他のグループの子どもは有意ではありませんでした。
なんと実際に寄付=行動を起こしたのは主人公が否定的な感情を言うグループでした。
この現象は罪悪感がポイントのようです。否定的な感情を言うグループだけが子ども自身に罪悪感を芽生えさせることが出来たと考えらえます。
そして罪悪感は子どもに個人的責任感を与えることができる。そのため未就学児の援助行動を促進したのであると研究者は考えています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
子どもの道徳心を育てるためには倫理的に正しいとされている行動には肯定的に、悪いとされていることには否定的に扱い、特に主人公にその感情を表出させることが効果的なようです。第三者的な視点は効果的でないと言えます。
これは、お話以外にも言えることかもしれませんね。子どもが悪いことをしたら、それをすることによってどんな感情になるか分からせてあげるとモラルや道徳心を育むことが期待できそうです。
また、罪悪感は行動まで促す強力な心理操作のようです。しかし、あまり多用するとストレスや自尊心低下など悪い影響がでるかもしれないと思います。使用には慎重になったほうが良いでしょう。
何かの参考になれば幸いです。
本や読み聞かせに関する記事は他にも書いていますので良かったらみてくださいね。
スポンサードリンク引用論文
Du, X., & Hao, J. (2018). Moral stories emphasizing actors’ negative emotions toward their nonhelping behavior promote preschoolers’ helping behavior. Journal of experimental child psychology, 168, 19–31.
今回論文で使用された本になります。良かったら購入されてみてくださいね。科学的にも証明された道徳心を育む本と言えるでしょう。